ここ5試合4勝1分け、10ゴール、クリーンシート3回とようやく手応えを掴みはじめたリバプール。その勢いのままに第23節、キャロル、ダウニング率いるウエストハムを攻略し勝ち点3を獲得した。本記事ではアラダイスの良手に捕まりつつも後半見事な修正を見せたロジャーズの策を見ていく。
【前半】(ウエストハム目線)ある程度はリバプールがボールを支配することが予想されたこの試合、ウエストハムは前からのプレッシャーで左サイド(ジャンサイド)を切りソングの守備範囲を奪いどころに設定。密集したエリアに対しても難しい縦パスを出したがるサコーから、多少強引にでもターンを試みる傾向のあるコウチーニョへ入るボールが狙い目だ。この策がはまって前半15分までにソング絡みで5度のボール奪取、リバプールに攻撃のリズムを作らせない。下記に代表的な2つの場面を挙げる。
前半1分:ダウニングとバレンシアが前からの圧力でジャンのパスコースを塞ぎ、ボールは逆サイドへ。真ん中で漂うソングが少しずつコウチーニョに近づく。サコーからコウチーニョへ縦パスが出ると猛プレスを浴びせ奪いきる。
前半11分:バレンシアとキャロルがジャンのパスコースを消し逆サイドに誘導。ルーカスからコウチーニョに入るパスを狙い取りきる。
スターリングやマルコビッチをスピードに乗らせると分がないため、プレーエリアを限定しつつソングを中心に守るウエストハムの戦い方は良手と言える。攻撃では得意のロングボール戦術と両CBの脇を狙ったサイド攻撃でまずまずの出来。前半だけでクロス成功10本、コーナキック4本とチームの色を生かした戦い方を見せた。前半88%の勝率を見せた空中戦ではリバプールDFを怖がらせたはずだ。
(リバプール目線)しかしながら、トップ4入りに向けて勝利が必要なレッズも黙ってはいない。コリンズにスピードで勝るスターリングが「いつでも裏を狙いますよ」という位置取りをすることでコリンズは間合いを開けざるを得えず、故にソングさえ外せれば楔のパスは易々と通る。それをスイッチに好調のコウチーニョ、ララーナが絡み、狭いエリアを崩してシュートまで持っていく。前半だけでエリア内から6本のシュートを放った。しかしながら、ご存じのとおりストライカーは不在。密集地帯でコンパクトに振り抜ける選手がいないので、ゴールを脅かすようなシュートは打てずに45分終了のホイッスル。
【後半】(リバプール目線)スコアレスで終わった前半を受け、後半開始から仕掛けるロジャーズ。ララーナをより右サイド側(マルコサイド)でプレーさせることでウエストハムの誘導の逆を突く。ララーナのプレー位置が変わったことは下記Squawkaの情報からも明らかだ。
ダウニング、バレンシアが常に高い位置を取るため前線からのプレスを回避できれば、彼らの後ろ(右裏)にはスペースが残されているのは当然。実際に46分、49分と立て続けにこちらのサイドから好機を生み出した。シュクルテルとジャンのポジション変更は、右サイドから攻めきれずにボールを失ったとき、前述のウエストハムアタッカー2人がその裏のスペースを使うのを防ぐためにより守備的なシュクルテルを置いたのだと考えられる。
(ウエストハム目線)閉じようとしていたサイドを後半開始早々立て続けに攻略されたことで不安定になる守備のバランス。要のソングは左サイドに釣り出される。すると50分、自らが誘導しようとしていた右サイドでモレノにフリーでの運び出しを許す。ひとつ前のプレーで逆サイドのカバーに向かっていたソングはコウチーニョを捕まえ切れず代わりにコリンズが引き出され、結果守備陣がモレノ周辺に5人が集まる形に。この時スターリングは中央でCBと一対一の状態。
(リバプール目線)ここでモレノは機転を利かしエリア手前で待ち構えるスターリングへ相手守備陣5人を置き去りにする浮き球のパスをを送る。20歳のスピードスターはコウチーニョとほぼ完璧なワンツーで抜け出しあとは流し込むだけ。リバプールが先制した。
ウエストハムはこの後ダウニングのポジション変更や選手交代で改善を試みるも挽回には至らず。79分には反対サイドからスタリッジに矢のようなシュート突き刺され万事休す。リバプールにとっては順位が一つ上の相手に対し2得点、クリーンシート、そしてエースの復活とこの上ない形での勝利となった。
次節のマージーサイドダービーも期待できそうだ。
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